【映画の感想】『殺人の告白』原題 [ 내가 살인범이다 ](2013年、韓国)

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ちょうど今、日本では藤原竜也と伊藤英明のW主演で『22年目の告白 ー私が殺人犯ですー』が公開しているが、そのリメイク元となった韓国版『殺人の告白』を鑑賞した。

単刀直入に言って、今年観た韓国映画の中でダントツの面白さだった。

 

(2018年4月26日追記)
『22年目の告白 ー私が殺人犯ですー』鑑賞しました。
【映画の感想】『22年目の告白 -私が殺人犯です-』(2017年、日本)

 

殺人犯が時効後に名乗り出て本を出版。被害者の遺族たちと事件を担当した刑事をどこまでも侮辱する犯人に対して、殺人犯を持ち上げる国民のアホたち。

一昨年に酒鬼薔薇聖斗こと元少年Aによる『絶歌』が世間を騒がせたが、それよりも前の2013年に公開したというところがすごい。

まあ、日本では表立って応援するような流れにはならなかったが・・・。

取り扱うテーマのダークさとは裏腹に、とんでもないアクションシーンまであり、エンターテイメント性も兼ね揃えたパワフルな映画になっている。韓国映画すごいなと素直に思ってしまった。

オススメ度:★★★★★★★★★☆ ★9点

*★10点が満点。点数は管理人の個人的点数です。異論反論は認めます。
*記事内の見出しに”(以下、ネタバレ)”と書かれているところからネタバレしています。

 

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どんな話なの?

10人の女性が殺されたおぞましい事件から17年後、突如『私が殺人犯だ』という本を出版し、メディアの前に現れたイケメン殺人犯イ・ドゥソク(パク・シフ)。

彼は出版会見でテレビに出演し、遺族たちに謝罪する。彼のイケメンっぷりと誠実な態度に世論は彼を擁護する方向へと向かって行く。事件を担当した刑事チェ・ヒョング班長(チェン・ジェヨン)と被害者遺族たち以外は・・・。

国民を味方につけ、印税ガッポガッポのイ・ドゥソクに対して仇討を計画する被害者の遺族たち。そして恋人をこの犯人に殺されてしまい、捕まえることが出来なかったチェ・ヒョング班長は、執拗に時効を迎えた殺人犯を追い詰めていく。

果たして本を出版したイ・ドゥソクの目的は本の印税だけなのか?時効を迎えた殺人犯に対して被害者遺族たちの復讐は成功するのか?チェ・ヒョング班長は殺人犯を捕まえることが出来るのか?

時効に対するアンチテーゼ、時効を迎えた犯人に対する復讐は肯定されるべきことなのか?などのテーマを交えつつ、物語が進んでいく。

重いテーマではあるものの、ハードなアクションとコメディも部分も併せ持つサスペンススリラーとなっている。

 

感想(以下、ネタバレ)

この映画を一言で言えば、

 

面白かった!

 

の一言に尽きる。

冒頭からチェ・ヒョング班長と殺人犯との壮絶な追いかけっこ。飲食店で殴り合い、裏路地で飛んだり跳ねたり、ビルの屋上からネオン看板に飛びついて落ちたり。この追いかけっこがかなり長いのだが、かなりハードなアクションを見せてくれる。

カメラの揺れと夜のため多少見にくいけど、その分臨場感がすごい。

いきなり序盤からフルパワーという熱を感じさせてくれる。

ナイフで顔を斬りつけられ、チェ・ヒョング班長は犯人を取り逃がしてしまうという15年前のところから話がスタートする。

 

その後15年後、時効が成立。この時効に絶望した1人目の被害者である女性の息子チョン・ヒョンシクが必死でチェ・ヒョング班長が説得するもビルから自殺をしてしまう。

このエピソードで、遺族の犯人に対する憎しみと怒りが強かったのだということを伝えるためだと思っていたのだが、まんまとクライマックスで騙されることになった。

 

そう、このチョン・ヒョンシクが実はイ・ドゥソクだったという衝撃のオチ。出版した『私が殺人犯だ』を書いたのは事件を追っていたチェ・ヒョング班長であり、これまでのイ・ドゥソクのメディアでの言動は全て演出。2人が真犯人を誘き出すための作戦だったという種明かしがこの映画で最高に気持ちいいところ。

手に唾を吐き、ジャージャー麺を顔にぶっかけてたのも全部2人の演出かよ!思いっきり騙されたわ!って心の中で叫んでしまった。

どれほどの危険にさらされるかもある程度覚悟した上で2人はこの作戦を遂行したということから、どれほど犯人を捕まえたかったのかとうことがわかる。

実際に遺族たちに捕らえられ、ボーガンで撃たれ、チョン・ヒョンシクは何度も死にかけてる。てかよく命助かったなと思うよ。まじで。

 

あと遺族たちに救急車で誘拐された時のカーチェイスのシーン。このシーンについては語らなければならない。いったいどうやって撮ったんだと思ってしまうほど、手が込んでいてこれまた冒頭のチェ・ヒョング班長と犯人の追いかけっこ並みに長い。

ここまでやられると流石に笑ってしまう。

走る車の上で戦うだけならまだしも、同じスピードで2台車を走らせて跨らせたり、挙句の果てには救急車に積んであるストレッチャーまで出してきて走らせるのに笑いが込み上げてきた。

笑いのシーンと言えば、他にも立ちションしている男が蛇に襲われそうになって女がボーガンで助けるマトリックスシーン。あれ必要だったんかな・・・。

それと、テレビ討論会で人権弁護士だと名乗る女性弁護士が「イ・ドゥソクの謝罪に涙した」とか言ってたシーン。

 

え、被害者の人権は?

 

絶対に誰もが突っ込むシーンだろう。

あと、チェ・ヒョング班長に握手を求めるイ・ドゥソクに握手してしまうたんぽぽの川村ミエコみたいな子。ビジュアルだけで面白かった。クライマックスのテレビ討論会でイ・ドゥソクが犯人だと応援するシーンとかもはやマンガのような安っぽい演出が逆にマイナスではあるけど、お笑い担当なのだと思えばまあ仕方ない気もする。

 

他にもいっぱい語りたい部分がある『殺人の告白』だけど、最後の部分だけはちょっと不満が残る。

真犯人としてまんまと餌に喰い付き、メディアの前に姿を現した J とのこれまた追いかけっこの末、捕まえた後にチェ・ヒョング班長の手によって殺してしまうところ。

そして J を殺した罪で逮捕され、刑期を終え出所してきたチェ・ヒョング班長に対して被害者の遺族である女性が労うシーン。

特にこのラストの出所したシーンによって、犯人に対する復讐を肯定しているように見えてしまった。

そもそも種明かしの時にビデオテープからまだ時効になっていないということがわかり、逮捕のチャンスが生まれたのにも関わらず犯人を殺してしまうというところが残念でならない。それほどまでに犯人を憎んでいたというチェ・ヒョング班長の気持ちはよくわかる。

ただね、テレビ局内で銃で殺害出来るところを止められてなお、殺す選択しか出来なかったというのがなんとも後味の悪いものをのこしてしまう。

これだけの大掛かりの仕掛けを打って出たにも関わらず。

 

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