【映画の感想】『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』(2014年、米・英)

4 min
スポンサーリンク

海外ドラマ『シャーロック』でハマってしまったベネディクト・カンバーバッチが主演の『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』。

シャーロックのようなサスペンス的要素を期待しましたが、まったく別の面白さがありました。

オススメ度:★★★★★★★★★☆ ★9点

*★10点が満点。点数は管理人の個人的点数です。異論反論は認めます。
*記事内の見出しに”(以下、ネタバレ)”と書かれているところからネタバレしています。

 

映画観るなら<U-NEXT>
Huluで今すぐ視聴!2週間無料トライアル実施中!

エニグマを解読したアラン チューリング

時は第二次世界大戦中のイギリス、アメリカから送られる食料物資を運ぶ船団が片っ端からドイツによって沈められていたイギリスは敗戦寸前まで追い込まれていた。当時優勢だっドイツとの戦争にイギリスが勝利するためには、解読不可能だと言われていたドイツの暗号機「エニグマ」の解読が必要不可欠だった。

その解読に奮闘するのが、海外ドラマ「シャーロック」でもお馴染み、そして僕が今ハマっている俳優でもあるベネディクト・カンバーバッチ演じる数学学者のアラン・チューリング。

パソコンに詳しい方ならピンとくるかもしれないが、チューリングマシンのチューリングはアラン・チューリングのチューリング。僕らの使うパソコンに大きな影響を与えた人物だ。

エニグマの解読により戦争を2年早く終わらせ、1400万人の命を救ったと言われるアラン・チューリングだが、同性愛者という一面も持つ。

そんな彼の史実に基づいた人生が描かれている。

 

 

人付き合いが出来ない(以下、ネタバレ)

シャーロックの時と同じく、相変わらず人付き合いの下手くそなカンバーバッチが見れる。

空気を読めず、相手の感情に興味なし。同僚からの昼メシの誘いには反感を買うようなことを言って断るし、責任者になった途端に使えない同僚を躊躇なくクビにしてしまう。本人に悪気はないけれども、気づけば孤立してしまっているチューリング。

ドイツの誇る暗号機「エニグマ」は機械であり、そのエニグマを解読できるのもまた機械だと主張し、チューリングはエニグマ解読用のマシンの製作を進めるのだが、誰一人彼を手伝わず、またそのことに対してチューリングはなんとも思っていない。

そんなチューリングだが、ヒロインのジョン・クラークに出会い変化が芽生えてくる。

このジョン・クラークの女優さんが大変に美しい。僕は一目惚れした。まじタイプ。

クラークの存在により、アスペ気味だったチューリングが少しずつ変化していき、チューリングを嫌っていたヒューたち同僚との関係が改善されていく。

中でも一番良かったシーンが上長であるデニストン中佐にエニグマの開発を中止させられ、クビにされかけたチューリングを、今まで散々嫌っていたヒューが「彼をクビにするなら、私もクビにしてください」とデニストン中佐に申し出るシーン。

初めてチューリングが「ありがとう」と言うシーンだ。

 

最大の敵はデニストン中佐

チューリングの上長であるデニストン中佐、この人物は規律をなによりも重んじり、プライドの高い頭でっかちな人物だ。チューリングがエニグマに対抗するマシンの製作費を要請した時、結果が出せるかもわからない得体の知れないものに金が出せるか!と門前払いする。そのためチューリングはデニストン中佐の上長に直訴して、予算はおろか暗号解析チームのリーダーを任せられる。

この時大きくメンツを潰されたデニストン中佐はチューリングを排除しようと目を光らせるようになる。
ソ連のスパイだと疑いをかけたり、結果がなかなか出せないマシンの製作を中止し、チューリングをクビにしようとしたり。

僕の目からは、ドイツよりもデニストン中佐の方が敵に見えた。

そんなエニグマ解読への最大の障害となるデニストン中佐もエニグマ解読後はパッタリと姿を消してしまったのは少々残念だった。

 

面白いのはエニグマ解読後

なんとか対エニグマ解読マシンの製作中止を免れたチューリングたちは、ヒューのナンパがきっかけとなり見事エニグマの解読に成功する。

これで終わりではなかった。

チューリングたちの最終目標はエニグマの解読ではない。ドイツとの戦争にイギリスが勝つこと。
イギリスの戦争の勝利こそがゴール。

となると、エニグマの解読が出来たことをなんとしても敵国ドイツに知られてはいけない。
知られてしまっては、暗号の解読までこぎつけたこの2年間の月日が水の泡になってしまう。

そこで、チューリングたちはMI6(英国情報機関)のミンギスにエニグマ解読に成功した事を告げ、そのことを伏せた上でイギリスが戦争に勝つため情報操作を依頼するのだが、このミンギスという男がなかなかにえげつない男で面白い。

 

全てを牛耳る男、ミンギス

劇中でデニストン中佐のさらに上を行く曲者、ミンギス。

この男がクライマックスでは全ての黒幕、ラスボスになるんではないかと思えるほどな凶悪度を誇っている。
登場人物全員を手のひらで動かすサマを見ていると、身の回りにこんな人がさぞかし恐ろしいと思えてくる。

デニストンがチューリングを疑っていたソ連のスパイは、実はチューリングの暗号解析チームの同僚であるケアンクロスだったわけだが、なんとミンギスは暗号チームに所属する前から彼がソ連のスパイであることを知っていた。
それを承知の上でソ連に情報を都合よく流して利用していた。

チューリングの婚約者クラークを利用して、チューリングをもコントロールしようとしてくるミンギスにチューリングが危険を感じ、クラークと婚約を破棄して安全な田舎へ帰そうとするシーンはかなり印象的なシーン。

あの時、チューリングがクラークに対して「一度も君を好きになったことはない」と言うのだが、見ているこちらも本心なのかどうかわからなくなってくる。

エニグマ解読までの今までの過程を考えればもちろん嘘に決まっているのだが。

 

同性愛者だったことでどん底の人生に

チューリングたちの活躍により、ドイツにエニグマ解読成功を知られることもなくイギリスを勝利、チューリング率いる暗号解析チームは任務完了となり解散、それぞれが散り散りになりそれぞれの人生を歩むことになる。

サブタイトルにもある「エニグマと天才数学者の秘密」、ミンギスにも「君ほど秘密の多い人間はいない」と言われていたアラン・チューリングの秘密の一つである同性愛者であること。恐らくミンギスもチューリングが同性愛者だという事は知っていたのではないかと思われる。

当時のイギリスは同性愛は違法とされていて、バレれば逮捕、罰せられてしまう世の中だった。

チューリングは自宅が泥棒に入られたのがきっかけに警察に同性愛者だとバレ、捕まってしまう。
そして有罪判決を受け、刑務所に2年間入るか、ホルモン投与の執行猶予になるかの選択を迫られ、ホルモン投与を選ぶ。

久しぶりにチューリングを訪ねてクラークがやってきた時のシーンのチューリングの痛々しさが凄まじい。
ホルモン投与の影響だろう。手は震え、憔悴しきっていて、大好きなクロスワードパズルすら解く気力がない。
憑りつかれたようにクリストファーと名付けたチューリングマシンに魅入られていて、とてもエニグマの解読という偉業を成し遂げた人物とは思えない。

その後、チューリングは青酸カリにより自殺する。エニグマ解読成功という偉業は国家機密であったため、チューリングは誰にもその偉業を知られることなく、同性愛者としてこの世を去ってしまう。

あまりにも不憫な人生の終わり方だ。

才能に溢れ、類まれな頭脳を持つ天才であったにも関わらず、生まれた時代が悪かったというべきか、いや、でもその時代に生まれなかったらエニグマ解読が出来なかったという悩ましい気分にさせられる結末。

きっと、今の時代に生まれてきたのなら・・・などと考えてしまう。

結局、終戦から50年以上もエニグマ自体がイギリスの国家機密として情報が開示されることはなく、もちろんアラン・チューリングたちの功績も誰にも知られることがなかったようだが、2013年にエリザベス女王により死後恩赦を与えられた。

はっきり言って、遅すぎる。
恩赦なんて生きているうちにもらえなければ意味がないじゃないか!と僕は思ってしまうのである。

願わくば、彼のように多くの人間を救う才能がある人間を潰さない世の中になってほしいと思う。
「事実は小説よりも奇なり」と思わせる、今年観た映画の中でかなりの満足度の高い映画です。

 

映画観るなら<U-NEXT>
Huluで今すぐ視聴!2週間無料トライアル実施中!

スポンサーリンク
カテゴリー:
関連記事