Mac、iPhoneを生み出したAppleの創業者として、世界で賞賛されているスティーブ・ジョブズ。
2011年10月に亡くなった時のスティーブ・ジョブスの賞賛のされ方はいまだ記憶に新しい。
学生に授業でMacに初めて触れてから、いくつものApple製品を今まで使ってきているので、必然的にAppleには興味を持っている。そのためスティーブ・ジョブズがどういった人物なのかというのはだいたいわかっていたのだが、この映画で描かれているスティーブ・ジョブズは僕が想像していたスティーブ・ジョブズにかなり近い印象を持った。
オススメ度:★★★★★★★★★☆ ★9点
*★10点が満点。点数は管理人の個人的点数です。異論反論は認めます。
*記事内の見出しに”(以下、ネタバレ)”と書かれているところからネタバレしています。
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目次
どんな話なの?
時は1984年、任天堂のファミリーコンピュータ(ファミコン)が発売された翌年。
Appleから発売される『Macintosh』の発表会の本番開始40分前、プレゼンでMacintoshの画面に「Hello!」と表示が出来なくなってしまうトラブルが発生し、どうにか表示させたいスティーブ・ジョブズは回りの部下たちに無理難題を押し付けるところから話が始まる。
Appleを創設したスティーブ・ジョブズがどのようにしてAppleを去り、どのようにしてAppleに戻ってきたのか?
1984年のMacintoshの発表会から1997年のiMacの発表会まで、スティーブ・ジョブスの半生が描かれている。
2時間の中でスティーブ・ジョブスをいったいどのように描くのか、期待して観てみたが、大胆なストーリー構成とテンポの良い会話劇で非常に面白かった。
あくまでも映画だということを認識したうえで鑑賞したのだが、かなり史実に近いお話になっているのではないだろうか。
個人的に猛烈に好感が持てるのが、”この映画がスティーブ・ジョブズの賞賛映画ではない" というところだ。
スティーブ・ジョブズの長所、短所、すべてひっくるめて生々しいキャラクターで描かれている。
ちなみに、コンピュータに詳しくなくてもこの映画は十分に楽しめる。多少、過去に発売されたAppleの製品の名前やコンピューター用語は登場するものの(コンピュータ好きならちょっとワクワクするが)、スティーブ・ジョブズが自分の子だとなかなか認めなかった娘のリサがこの映画でとても大切な存在となっているため、ジャンルで言えば人間ドラマだと言える。
感想(以下、ネタバレ)
『最高の経営者にして、最低のクズ』として有名なスティーブ・ジョブズだが、この映画でのジョブズのクズっぷりは痛快だ。
まあ、クズというよりも、大きな子供と言った方が正解なのかもしれない。
自分の言いたい事だけ言って、人の話は聞かない頑固でわがまま。常に一方的に人に要求をするくせに、相手からの気に入らない要求は一切受け入れない。たとえそれが最も親しくてAppleを一緒に創業させたスティーブ・ウォズアニックですら。一度「ノー」と言ったら最後までそれは覆らない。
そして、どこからその自信が湧き出てくるのか、常に自分が正しく、自分に才能があると思っている。いや、もちろんAppleが大きくなりiPhoneを飛ぶように売った今でなら、そう思っていても誰も文句は言わないだろうが、Macintoshで大コケした挙句、Appleを追い出された後でさえその考えを改めないところはある意味尊敬に値する。
自分にとって都合の悪い話をされたら、話の腰を折り、強引に話にすり替えて自分の要求を相手に突きつける。時には嘘もつけば脅しもする。
うん、なんだか書いてるうちにやはり大きな子供ではなく、クズなように思えてきた。
しかし、このクズから学ぶことは多い。
なぜスティーブ・ジョブズが成功を収めることが出来たのか?
それは自分に対する絶対的な自信、自分でこうだと決めたらそれに向けてなんとしても成し遂げようとする強い信念。回りに反対されようが、嫌われようが、手段を選ばない。人としての最低限の常識、モラルや倫理観が完全に欠落している。
でもだからこそ、徹底的にデザインにこだわり抜いたiPhoneを始めとする数々のapple製品を生み出してきたのだということがわかる。
映画からはジョブズの自分の製品への情熱と自分を見捨てたAppleへの激しい復讐心が読み取れる。
Macintosh、NeXTcube、iMacの発表会直前のシーンの3部構成となっていて、3段階でスティーブ・ジョブズが変化していくこの話の構成はシンプルで面白かった。
終始会話劇で、ジョブズが誰かと常に口論しているんだけど、その口論、会話劇の中にWindowsやビル・ゲイツ、過去のAppleの製品なんかも出てきて、パソコンが好きな人はニヤニヤして楽しめると思う。
この映画の中で良かったシーンはNeXTcubeの発表会前のジョブズとウォズニアックの口論、元AppleのCEOであるジョン・スカリーとの口論、そしてiMac発表前のジョアンナとの口論。
この3つの口論を観ただけでも、いかにスティーブ・ジョブズは回りの人間に恵まれていたのかということがわかる。上述した通り、ジョブズのこのクズっぷりにして、なぜ回りの人間がこうも人として大人でありジョブズを気にかけてくれるのだろうか・・・。
特にMacintoshでやらかした挙句、NeXTにまで付いてきたジョアンナはどんだけドマゾなんだよと僕は思ってしまった。
ジョブズもクリスアンじゃなく、ジョアンナと結婚すりゃ良かったのにってくらい2人の仲は良い。この映画では、ジョアンナが極めて重要なポジションを担っていて、独裁者であり暴君のジョブズに対して、恐れる事なく率直な意見をぶつけられる数少ない人物の一人。彼女のおかげで、あの天才と呼ばれたジョブズでも、時には悩み、苦しみ、葛藤しているということを垣間見せてくれる。
リサとの仲直りさせようとジョブズに猛抗議するシーンは彼女の優しさに満ち溢れている。あなたはジョブズのお母さんですか?って思ってしまうほど。
そしてラストに娘のリサと仲直りするシーン、iMacの発表会で登壇してスポットライトを浴びる父親を観るリサと、舞台袖のリサに優しく微笑むジョブズのシーンに繋がり、非常に感動的だった。
1000曲ポケットに入れて持ち運べるようにしてやると、仲直りの時にリサと約束するシーン、さりげなく後に発売されるiPodの話題を出してくるあたりも上手いなあと思ってしまった。
1点だけ。
この映画で不満なのは果たしてiMacの発表会でジョブズがウォズニアックの要求を飲んで、Apple Ⅱチームに一言でも労いの言葉をかけたかどうか。そこが描かれていなかったこと。あそこまでの大喧嘩をしておいて、この結果を教えてくれないとはなにごとか!!
そこだけがこの映画唯一の不満だ!
映画の発表会に出てきた製品のスペックを調べてみた
映画の感想はこれにて終わりにして、劇中の発表会で出てきたパソコンたちがどんなものだったのか気になったので調べてみた。
Macintosh(1984年)
CPU | MC6800(8MHz) |
メモリ(RAM) | 128KB |
メモリ(ROM) | 64KB |
FDD(フロッピー) | 400KB |
出力端子 | 2つ(モデム用とプリンター用) |
ディスプレイサイズ(解像度) | 9インチ(512×342ドット) |
ワロタ・・・。
記憶装置がフロッピーディスクな上、ROMと足しても1MBもない。iPhoneで撮った写真を1枚も入れることが出来ないじゃないか。これが、30年前のパソコンなのか・・・。
CPUも8MHzって、今現在の主流のCPUは2GHzだから計算すると、2GHz=2000MHzだから250分の1の性能ということか。
1984年当時、これが日本では698,000円で売られていたんですよ、奥さん!!
NeXTcube(1988年)
CPU | MC68030(25MHz) |
メモリ(RAM) | 8MB or 16MB |
FDD(フロッピー) | 2.88MB |
MO | 256MB |
ディスプレイ解像度 | 1120×832ドット |
OS | NEXTSTEP |
4年の時を経て、CPUは約3倍、RAMは62.5倍と大幅にパワーアップ!
記録装置として新たにMOを搭載し、OS(オペレーションシステム)も時代を先取りした高機能なものに。しかしながら高機能すぎて大幅にパワーアップしたCPU、RAMでもスペック不足で動作が遅かったそうな。
ジョブズの追い出されたAppleへのリベンジを賭けた渾身の力作も蓋を開けてみたら大爆死。ウォズが劇中でも予想していた通り、『史上最大の失敗作』となってしまった。
iMac(1998年)
CPU | PowerPC 750(233MHz) |
メモリ(RAM) | 標準32MB、最大128MB |
HDD | 4GB |
USB1.1 | 2ポート |
内臓モデム | V90対応、56Kbps |
内臓イーサネット | 10/100Base-T |
OS | Mac OS 8.1 |
ようやく生で見たことのあるパソコンが出てきたよ。
NeXTcube発売から10年後、ようやく記憶装置にハードディスクドライブが出てきて、ギガバイト化。モデムが内蔵されてよりインターネットにつなぎやすくなったパソコンになりましたね。
曲線的なフォルムデザインと多彩なカラーバリエーションで、難しそうに見えるパソコンを少しでも親しみやすく感じるようジョブズがデザインしたんでしょう。てか、Macはこの頃からパソコンをオシャレな方向へと向かわせていったように感じる。
それにしてもいくら30年前のパソコンとは言え、MacintoshはiPhoneの写真を1枚も記録できないほどのメモリしか持ち合わせていなかったってのが驚きでした。
あれが698,000円か・・・。もしかしたら今20万近くで売られているMacBookProも30年後には100円で買えるようになってたりするのかな。
(おわり)